ヒトリキリ

脱力系全力ブログ

若作りを怠らないこと

 

僕の友人S氏について。

以前は月2ペースで会っていたのですが、最近はコロナの影響もありほとんど会わずにいました。

その代わり電話をする頻度が平日の週5に爆増。5分くらいの通話だけど、こうも毎日電話してると話すこともなくなってくるわけで。

「今日は快便だったよ」

「いや〜今朝はギリ快便だったね」

「最近お通じが良くてサイコー」

と、S氏の便通事情を毎晩聞かされるはめに。この地獄の日々に終止符を打つべく僕はついに切り出した。

「うんこ電話するのやめよう」

「じゃあしりとりでもする?」

「する」

1日1ワードだけいうしりとり。もう次の日になったら何のしりとりなのか覚えてないし、うんこ電話よりだるい電話になってしまった。ンから始まる言葉って結構あるらしい。このしりとり電話、永遠に終わる気がしない。

年末年始の休暇は、ここぞとばかりにひきこもっていました。誰にも会わずに、なんなら誰とも話さずにいたかもしれない。勿論そうする事は事前に伝えておいたけど、妻には申し訳なかったな。でもおかげで大分回復しました。

仕事もセーブして、今までわりと完璧にやりたい派だったんだけど、胃薬飲むまでやるのはやめた。求められたラインまでできたら終わりにすることにした。頼まれても無理難題は断ることにした。他の人が残した仕事を引き受けないようにした。疲れたって言うようにした。これが今年の僕の一味違うところです。

しかし、多分僕は変に真面目過ぎるところがあって、急に仕事をセーブすることがなんだか怠けているようにしか思えず、結局そのこと自体がストレスになってしまうのでした。もう性格だから仕方ないんだろう。

「まぁ真面目が集まったような職場だからなぁ」

「Uさんも真面目なんですか」

「そりゃあそうだろう」

中間管理職Uさん。確かに誰が見ても真面目な人です。仕事中に笑っているところも見たことがないし、冗談を言うところを見たこともない。

「真面目というより無愛想ですよね」

「愛想良くしろって言いたいの?」

「えっ違いますよ、褒めてるんです。いや、褒めてはいないか」

「北澤君こそ無愛想だろう」

「えっ」

そんな……こんなに愛想をふりまいているのに……。

「Uさんには言われたくないです」

突然、上司に喧嘩を売るみたいな発言をしてしまった。僕は叱責覚悟で間を置いていると、Uさんは「真面目と無愛想が集まった職場なんて働きづらいなぁ」と笑って仕事に戻った。

Uさんが笑うのを初めて見てしまった。マスクで笑顔は隠れていたけど。それは恐ろしくドライな笑い方だった。

もしも僕もあんな風に見えているのだとしたら!

僕が仕事を教えている後輩FくんやTさんはさぞやりづらかったに違いない!

「Fくん、この前の資料まとまった?」

「あーもう少しです」

「いいね!もう少し!その調子だよ素晴らしいよFくん!」

「なんすか急に、こわ」

S氏との電話中、今日の愚痴を言いなさいというコーナーが設けられることがあります。

愚痴がないわけではないけれど、話すと長くなるし気分も暗くなるのであまり言わないようにしている。それをS氏は「ためこんでいる」と思うらしく、半ば強制的に愚痴を言わされる羽目になる。

「今日は愚痴があるよ」

「なんだ!言うんだ!」

僕は朗らかに接した後輩に怖いと言われた事を話した。僕も上司Uさんのように、無愛想に見えているんだろうか。人当たりの良い人と思われたいのに、僕の何がいけないんだろうと。

「ヒロくんヒロくん」

「はい」

「君は不器用なせいで無愛想に見えるんだよ。不器用なのは直せるもんじゃないから、諦めてください」

「そんな!」

「人当たりが良いって俺みたいな人のことを言うんです。ヒロくんは俺みたいになれるのか」

S氏みたいに人見知りせず誰にでも(ちょっと強引に)距離感を縮めるような戦法はできないし、話したそばから「この人冗談通じそう」って思わせる雰囲気を僕には出せるわけがない。

「無理だよ俺真面目だし」

「人が不真面目みたいな言い方をするね」

マスクがあって助かっている事も多い。例えば笑顔なんて作らなくても、声だけ少し高めにすれば笑顔で接しているように聞こえるみたいに。仕事で外部の人と打合せしたり来客対応したりするときは、意識的に声を少し高めにしています。

「北澤さんって目が笑ってないですよね」

「Tさん。実は口も笑ってないんだ」

「それ余裕でばれてますよ」

そんな……この声だけ笑顔大作戦が失敗に終わっていただなんて……。

「でも多分皆そうですよ。楽ですよねマスク」

「Tさんも笑ってないの?」

「まぁそうですね」

なーんだ皆同じじゃないか。僕だけ手抜きしているわけじゃない。皆マスクの下は無表情。「マスクの下も笑顔です」という貼り紙がある店の店員さんも、きっと無表情で接客しているに違いない。

マスクって便利だなぁ。

「マスクしてるから余計ですけど、北澤さんすっごく冷たく見えますよ」

いいんだ別に。

「最初北澤さんと組むってわかったとき、めちゃくちゃ怖かったですよ。この人絶対質問しても教えてくれないって思ったし」

よく言われる。

「でもなんか抜けてるじゃないですか。だから助かってます」

僕が抜けていると思われるのは心外だけれど、事実そういう事がないわけではなく、むしろめっちゃある。天然だと言う人もいる。でもそれは多分違っていて、僕は天然ではなくただの「おっちょこちょい」だと思う。

「おっちょこちょい」はどんなに気をつけていても直せない。気をつけた所で、何故そこで!?という時に突拍子もないことをしてしまう。注意散漫。集中力が足りないのかもしれない。

「今日も愚痴があります」

「言ってみなさい」

「抜けてるとこがあるのを後輩にばれてた」

「おめでとう」

「努力して隠した方がいいと思う?」

「隠さなくてよろしい。抜けてる人って思われた方が楽でいいっしょ」

「えーおっちょこちょいおじさんはやばいじゃん」

「確かに。できるだけ努力しておじさんだということを隠すんだ」

 

隠すのそっち。